※日本住宅保証検査機構提供
専門家が劣化・不具合状況を調査
リフォームでは、住宅の状態がどうなっているのかを専門家が調べるインスペクション(建物状況調査)が注目されている。調査は基本的に目視による非破壊調査で行い、基礎や外壁のひび割れ、天井の雨漏りなどの劣化・不具合の状況を調べる。
国が創設した調査技術者講習制度
住宅の健康状態を知ることで、補修の必要性を踏まえた適切なリフォーム計画を立てることができる。
国土交通省が2017年に創設した「既存住宅状況調査技術者講習制度」により、既存住宅のインスペクションを実施できる技術者の資格が規定された。同省の定める講習会を受講し、試験に合格した建築士は「既存住宅状況調査技術者」の資格者として登録される。同技術者は一般社団法人住宅リフォーム推進協議会のホームページから検索できる。
同協議会発行の「令和5年度住宅リフォームガイドブック」によると、インスペクションの主なメリットは次の通り。
①専門家に調査してもらうことで家の健康状態が分かる
②本当に必要な工事、不要な工事が明確になる
③工事に優先順位を付けるのに役立ち、適切なリフォームができる
④見積もり内容を確認して契約するので、トラブルの防止につながる
⑤診断結果等を基に長期のメンテナンス計画を立てることができる
【既存住宅状況調査技術者の探し方】
★既存住宅状況調査技術者検索サイト 住宅リフォーム推進協議会ホームページ
https://www.kizon-inspection.jp/
費用相場は「5~6万円台」が一般的
※日本住宅保証検査機構提供
◎第三者のチェックが入るメリット
住宅の瑕疵(かし)保険や住宅性能表示制度などの審査業務を担う日本住宅保証検査機構(JIO)北関東支店(宇都宮市)の小木曽健人支店長は「設備機器を交換するだけのような部分的なリフォームより、家全体に関わるような一定規模以上のリフォームを行う場合にインスペクションは有用。国のガイドラインに基づいた調査方法を用いて、第三者のチェックが入るメリットがある」と話す。
既存住宅状況調査技術者は対象の住宅に出向き、「構造耐力上主要な部分」に係る調査部位として基礎、土台・床組み、外壁・軒裏、小屋組みなど、「雨水の浸入を防止する部分」に係る調査部位として外壁、バルコニー、屋根、天井などを目視で調べ、各部位の劣化事象などの有無を明らかにする。結果は調査報告書として提出される。
◎結果は調査報告書として提出
ただし、非破壊調査には限界もあり、壁をはがして中を見るようなことはできない。調査費用は「5~6万円台」が一般的な相場のようだが、調査会社や調査内容により異なるため、見積もりを依頼して確認する。
見積もりを依頼するリフォーム会社に既存住宅状況調査技術者がいる場合は「有資格者に国のガイドラインに基づいたインスペクションと報告書の作成」を依頼することもできる。その際は見積もりが有料か無料かを確かめよう。
具体的に要望することが大切
◎住宅性能表示制度の等級使う
小木曽支店長は、見積もりを依頼する際には、住宅性能表示制度に基づいた「等級」を使うなどして「具体的に要望することが大切」とアドバイスする。例えば「暖かくしてほしい」と言うだけでは、各事業者がそれぞれの判断で見積もりを作成してしまい、断熱性能に差が出る可能性がある。各見積もりを比較検討し、金額の安い業者を選んだら「あまり暖かくなかった」という結果にもなりかねない。
依頼主は自身が目的とするリフォームについて学んだ上で、「建物の現況をインスペクションで調査してください」、「暖かさは断熱等級の4(省エネ基準)を希望します」「断熱等級5(ZEH基準)にしてほしい」などと具体的に示すことで、希望するリフォームが実現する。
◎家を建てた会社に依頼するのが前提
業者選びでは「家を建てた会社に依頼するのが前提」と指摘する。建てた会社は、図面などの資料を保存していることが多く、建物の基本的な情報を把握した上でインスペクションを実施することができる。
一般的には、リフォームを行うと性能の良いサッシに交換したりするなどして、家が以前より重くなる。そのため建物の構造も併せて強化しないと地震などの際に危険性が増す可能性がある。間取り変更のようなリフォームでは、建物の構造を理解した上で施工計画を立てないと不具合が生じ、逆に危険な住まいになってしまうこともある。
既存住宅の売買では、宅建業者は対象建物がインスペクションを実施しているかどうか、実施している場合はその結果の概要などを重要事項として説明することなどが義務付けられている。