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水平ラインが強調された外観フォルム。薄屋根を突き抜け、空へと伸びる無機質な煙突がシンボリックなH邸は、ウッドデッキや外壁の一部に用いた木部が庭の緑と調和し、周辺環境にもよくなじんでいる。
建築してすでに1年が過ぎ、家の中もすっかりこなれた様子。そこかしこからご夫妻の暮らしぶりがうかがえる。床にはオークの無垢板を張り、壁は珪藻土、天井には卵の殻を原料としたエッグウォールを用いるなど、家じゅうが自然素材で満たされている。横並びのダイニング・キッチンと空間が連続するリビングは、伸びやかな吹き抜け仕様で明るく開放的。大開口の先にはウッドデッキが広がり、深い軒が日差しをコントロールする。各所に配した開口部は屋外の景色を内へ取り込み、視線が抜け、風が通る。
ご夫妻はさまざまな要望を設計士に伝えたという。中でもこだわったのは造作。Ⅱ型のキッチンや洗面台、棚や収納、建具などあらゆる場所に用いたことで、木の優しい風合いで統一の取れた居住空間に仕上がった。
リモートワークが多いご主人は、働きやすい環境づくりを重視。吹き抜けとつながる2階に書斎をしつらえ、立ったまま気軽にパソコン作業ができる絶妙な高さのキッチンカウンターを設けた。奥さまは和室をリクエスト。LDKから程よい距離感でゾーン分けされ、薪ストーブのある土間とつながるくつろぎの空間。ご夫妻は壁面のカウンターで晩酌を楽しむこともある。
玄関からパントリーを抜けてキッチンへと続く動線や、回遊できる洗面脱衣室の水回り動線もスムーズだ。
H邸は、2022年度「ぐんまの家」設計・建設コンクール(県など主催)で最優秀賞を受賞している。自然素材をふんだんに用い、パッシブ設計を採用した開放的なプランは、南北に風が抜け、日射の取得と遮蔽がバランスよく機能する。空間の連続性や回遊する動線、丁寧な造作、在宅でのテレワークに対応したスペースの確保など、これらの総合力が高く評価された。施工した館林林業は「家づくりの提案の幅が広がった」と自信をのぞかせる。
建物の温熱環境も申し分ない。空調設備に床下エアコンを導入し、冬は家全体を暖める。夏は吹き抜けの上部からエアコン1台で1階全体を冷やす。HEAT20・G2レベルに該当(Ua値=0.42)し、低燃費で快適に過ごせる。気密性を示すC値は0.4。耐震等級3の取得により家族が末長く安心して暮らしていける。
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