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U邸は、旧家を建て替え、念願の純和風建築の平屋が完成したばかり。広々とした敷地には、手入れの行き届いた樹木と庭石が調和する見事な造園が施され、庭と木造建築が互いに引き立て合っている。
深さ2㍍にもおよぶ三方に張り出した軒は、12本の太い柱に支えられ、軒下に長く連なる洗い出し仕上げの足元には、大きな敷石がリズミカルに並んでいる。
ポーチに埋め込まれた巨大な御影石の上を通って玄関に入ると、木の香りとともに広い土間と天井が高く奥行きのある開放的なホールに圧倒される。正面には木肌の美しい1尺のヒノキ柱が堂々と備わり、壁面に張られたヒノキの腰板は、生き節が不規則に描かれた模様のようで、見飽きることがない。
この家を建てた福原建築は、「木造骨太住宅」を掲げ、無垢材を惜しみなく用いた本格的な和風建築を得意とする。施主のUさんは、同社が所有する豊富な樹種、そして匠の伝統技術にほれ込んで家づくりを依頼した。木の家をこよなく愛する本物志向のUさんは、「細かいことをあれこれ伝えるよりもプロにお任せしたほうがいい家ができる」と信頼を寄せた。
居室は主に3部屋がL字に配置され、それぞれが引き戸による開放的な続き間となっている。3部屋のうちの2間は床にケヤキの無垢板を張り、残る1部屋はい草の香る畳敷きの和室。簡略化した床の間が多い中、U邸は日本建築の基準に則った床の間が、和室と居間の2カ所に設けられている。特徴ある木目を生かしたケヤキ1尺の床柱が天井を貫く様は圧巻だ。
無垢材をふんだんに使用した居室は、木の持つ優しい風合いと意匠性が際立っている。継ぎ目のない1枚の秋田スギを張った竿縁天井や升目の美しい格天井、細やかな木目が樹齢の長さを思わせる無垢の造作建具や木製格子の欄間など、端正な職人技が随所に光る。
生活動線は行き止まりのない回遊動線。玄関ホールの裏側にバリアフリー仕様のトイレ、洗面脱衣室、浴室がゆったりと一列に配置されている。居室に沿うように縁側もまたL字に配置され、外側には5寸、内側には6寸のヒノキ柱にがっしりと支えられている。大きな開口のその先に広がる庭の景色がいつでも視界に入り、外と内を緩やかにつないでいる。
「庭木を増やして四季の移ろいを楽しみながら暮らしていきたい」。建物は完成しても、Uさんの理想とする庭と調和する家づくりはまだ始まったばかりだ。
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