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「匠の技が生きる家」。原木の仕入れから製材、乾燥、加工、そして設計・建築まで一貫して手掛ける数少ない工務店であるマルキの飯野勝利社長は、完成したT邸をこう表現する。
大工の伝統工法である手刻みによる木組み、あえて残したあたたかみを感じる漆喰のコテ跡、藤岡の職人による手焼きの瓦と鬼瓦。瀟洒で繊細な建具や家具、洗い出しの玄関土間など「匠の技術」が集結している。
Tさんが家づくりを考えたときに望んだのは、木や漆喰などの自然素材を使用し、環境に配慮した住まい。導かれるようにして出合ったのがマルキだった。「『群馬の木を使って山を守る』『古きよきものを残す』という飯野社長の哲学にも共感した」というTさん。自身も地元の素材で家を造ることや、人に伝わって今に残るものを生かし、未来につなぐ住まいづくりが、地域の発展や技の伝承につながればという思いがあった。
こうしてでき上がった住まいは、木の見本市さながら。吹き抜けのあるリビングでひと際存在感を誇るのは、梁せい50㌢という見事なアカマツの梁。1階の床やバスルームは、木肌が細かくやさしいイメージのヒノキ、キッチンの天板は趣のある木味のシオジ、土間の棚板には淡い色合いのキハダ、玄関の建具には美しい笹目模様が目を引く樹齢200年の吉野スギが使われている。そして、土間の手洗いには、T邸の庭先に江戸時代から伝わり、伐採せざるを得なかったカキの木を用いており、歴史を物語っている。
また、「前橋市の木」であるイチョウやケヤキをテーブルや梁に、群馬の木でかつて旧富士見村の「村の木」でもあったクロマツを床の間に使用するなど、地元愛もたっぷり。建材の9割は、県産材を用いている。
Tさんが希望したのは、つながりのある空間。広いリビングは、主に親世帯が使う畳敷きの小上がり和室とつながり、リビング内階段で2階ともつながる。薪ストーブ前の小上がりは、みんなで座って炎のゆらぎを楽しめるよう、あえて幅広に設計。リビング前につくったデッキでは、周りの景色を眺め、家族でくつろぎながら食事も楽しめる。
つながりを大切にしながらも、リビング内には畳敷きの小上がり和室との間に吊り戸を設け、必要に応じて空間を仕切ることができる。和を大切にしながら、個を尊重したアイデアだ。
屋根には6kWの太陽光発電を搭載し、ZEHを実現。地域型ブランド化住宅の補助金も活用したお財布に優しい住まいでもある。
「これからは家で過ごす時間が増えそう」とTさん。「畑で作った野菜を使った料理にいそしみ、時には家族にふるまいたい」と微笑む。マルキの住まいが生んだつながりは、かけがえのない家族の時間を刻んでいく。
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