全国的にこれまでになく空き家・空き地が増えている。すでに社会問題化しており、群馬県も同様の状況だ。4月から相続登記の義務化がスタートしたが、県内の空き家の数は16万1,000戸に上り過去最多となった(総務省の住宅・土地統計調査より)。
所有の空き家・空き地で悩んでいたり、迷っていたりする場合は、一度専門家に相談してみるのがおすすめ。
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今回は、思い切って相談したことで、お互いのプラスになる取り引きが成立した事案を紹介する。当事者である3人にも話を聞いた。
2023年2月。新聞広告で見かけたTさんは、すみかくらぶ編集室の「空き家・空き地のお悩み」受付窓口に一本の電話をかけた。地元の新聞社が運用している、という安心感と信頼感が背中を押したという。
Tさんは長男。実家は群馬県上野村にあり、両親ともに体調を崩したのをきっかけに、自宅へ住まわせていた。実家には人が住まなくなるため、何か活用できないかと考えたのだ。
両親にとっても思い出の家。「ただでも住んでくれる人がいたらうれしい」と両親とTさんの意見がまとまった。
10日ほどして、1社から「相談に乗れます」と手があがったことを知らせる資料が、すみかくらぶ編集室からTさんのもとへ届いた。
その社は、太田市にある一般社団法人 住まいの相談室。Tさんはすぐに連絡を取り、同社の室長 坂本さんと春になったら現地を見に行く約束をした。
2023年3月。上野村の現地に行き、Tさんの実家を確認。坂本さんは当時「売るのは非常に難しい物件。もし売れたとしても、時間がかなりかかる。移住希望の方を中心に声をかけるのがベストか」と考えていたそう。
現地確認を踏まえて坂本さんは、Tさんに解決の道筋を提案し、正式にサポート契約を結ぶことになった。ひとつひとつ進めていく中で、Tさんからある提案があがった。
「地元に住んでいる人に声をかけてみてもいいですか?」
この提案が、思わぬ展開につながっていく。地元に住んでいる人はみんな持ち家、というわけではなく、賃貸住宅に住んでいる人もいて、声をかけたい人がいる、ということだった。
その人とは、草木染めの工房をやっているMさんだった。
Mさんは20年前に上野村に移住。それ以来、ずっと住み続けている。先述した通り、草木染めの工房をやっており、作業場から少し離れた賃貸アパートに長く住んでいた。
このまま家賃を払い続けるのかと思っていた矢先、Tさんから提案があった。Mさんは「最初、突然作業場に訪れたTさんから『うちの実家に住みませんか?』と言われたときはびっくりしました」と話す。
Tさんはメディアにも取り上げられていたMさんのことを知っていたが、MさんはTさんの両親しか知らない。話すうちに「知り合いの息子さん、とわかってからは安心して話ができました」。
不思議な縁で、大雪が降った年に、Mさんの作業場の壊れた屋根を直したのは、Tさんの父親だった。
~続編のその2はこちらからお読みいただけます→「ほんとにあった」空き家活用の話 ~群馬県上野村 編~ その2