「空き家」の利活用・売却編 ~その1~

空き家
「空き家」の利活用・売却編 ~その1~
       

「高齢で管理ができない」「固定資産税が負担だ」「遺産分割のために現金化したい」-空き家を手放す理由はさまざまだが、いざ売却となると、「どこに相談したらよいか」「本当に売れるのか」と、不安を抱える人は少なくない。群馬県宅地建物取引業協会の新井栄常務理事に空き家を売却する際の注意点について聞いた。2回に分けて紹介する。

     

          

群馬県宅地建物取引業協会 新井 栄 常務理事

          
Q.空き家の売却を考えています。
       

A.一般的に空き家は管理されず、老朽化が進むと不動産としての価値が低下し、所有者や相続人はどんどん売りづらくなります。

 

売却方法は「解体して更地にして売却」「リフォームして中古住宅として売却」の3通りあります。比較的新しい住宅の場合は住宅ローンなどの残債がある場合が多く、売却額とローン残高の額によっては手元に残るお金が考えていたよりも少なかったというケースが少なくありません。売却額とローン残高を試算してからがお勧めです。

 

賃貸として収益性があれば、売却以外にも活用方法がありますので、不動産業者に相談するのもお勧めです。大切な財産を手放すわけですから慎重に考えましょう。

     

          
Q.一般的に売却しやすいのはどんな空き家ですか。
       

A.売却前に、①権利関係がはっきりしている②ローン残債の有無③境界がしっかりしている―の3点を確認しておきましょう。

 

相続時に活用方法が決まらず、「とりあえず共有」にしているケースが非常に多くみられます。相続人が複数いる場合、権利者全員の確認が必要となりますから、誰が土地や建物の権利を持っているかをはっきりさせておくべきです。

 

ローン残債がある場合は、売却金でローン返済が可能かどうか、ローンの額が売却額を上回るようであれば自己資金を出せるかについても検討しておきましょう。また、隣地との境界がはっきりしていない場合は測量などの費用もかかります。

 

普段からメンテナンスがしっかりしている家は売れやすい傾向にあります。最近、大手ハウスメーカー10社グループが「優良ストック住宅推進協議会」を設立し、参加社の住宅で共通の基準を満たすものを「スムストック」と認定し、手入れが行き届いた耐久性の高い住宅をきちんと評価しようという動きが始まりました。認定された建物の場合、売却の際はこれまでのメンテナンスやリフォーム工事などもきちんと評価されるようです。空き家の購入を考える方には新築よりもお求めやすい価格が魅力でしょう。

     

          
Q.空き家を相続する予定があります。空き家を売却した人から「大変だった」「時間がかかった」と聞きました。何か気を付けることはありますか。
       

A.相続時に5人で共有した物件のケースでは、そのうち2人の相続人が死亡し、その子どもたちが相続人になったのですが、子どもの代となると遠方に住んでいる人もいて、委任状をもらったりする手続きに時間と費用を要しました。一人でも売却に納得しない人がいると解決に時間がかかります。費用もかさみ、過去に売却までに要した費用と売却額がほとんど変わらないというケースもありました。

 

「お金の話をして、あさましいと思われないか」と考えるのではなく、相続人それぞれが現実に向き合うことが大切です。活用方法が決まらないために共有名義にすることは、問題の先送りに等しいことを知っておきましょう。特に資産を持っている人は、のちに子どもたちのトラブルに発展しないよう活用方法を決めておくのも一つの方法です。

     

          

次回は県内の空き家の需要の状況や、不動産業者へ相談する際のポイント、査定するときに心掛けたいことなどについて紹介します。

掲載は5月26日を予定。

  

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