中之条町で隔年開催される国際芸術祭「中之条ビエンナーレ」の参加アーティストらが企画運営した見本市「Art Fair(アートフェア) NAKANOJO 2024」(運営委員会主催)が6月、同町の旧廣盛(ひろざかり)酒造で初めて開かれた。トークイベントもあり、町に移住した芸術家たちが創作活動などについて語り合った。延べ約2400人が訪れ、ビエンナーレとは異なる新たなアート体験を楽しんだ。
フェアでは本県ゆかりの47組が絵画や立体など1022点を展示し、そのうち586点を販売した。作者が値付けした1100円~約10億円の作品が写真展示も含めて並んだ。会場で応対する制作者も多く、来場者は対話を楽しみながらお気に入りを探した。最高額は、アートユニット「DUV(ダブ)」のH―NAITOさんが昨年のビエンナーレで使ったデコレーショントラック。約40年かけて仕上げた唯一無二の1台と言い「安いくらいだ」と笑った。
運営委員長を務めた彫刻家、西島雄志さん(55)は、子どもからお年寄り、町民や都心のアートファンら「幅広い客層でにぎわった」と振り返る。小中学生がお小遣いで作品を購入する姿も見られ「東京のフェアではまずありえない。気軽に来て楽しんでもらえて、アートが町に根付いていることを実感した」と話す。
トークでは、他県から町に移住したアーティストの相田永美さん、糸井潤さん、古賀充さん、佐藤令奈さん、星野博美さん、パフォーマンスユニット「DamaDamTal(ダマダムタル)」が、移住後の創作や生活について語った。
「中之条での生活が創作に影響している」「東京ではできなかったことができる可能性がある」などの意見が出た。働きながら制作する人が多いが、「今回のようなフェアの開催は創作だけで生活することに近づく」といった声もあった。
西島さんも芸術祭参加を機に中之条へ移住した。アートが浸透する町だが、隔年開催のため日常的に芸術に触れる機会が少ないと感じ、移住アーティストが増える中でその生計も考えるようになった。町や芸術家、ファンにとって良い形にしたいとフェアの開催を決めた。
成功裏に終わった初開催を喜びつつ、アーティスト主導の運営を継続するため支援態勢も含めた組織づくりを課題に挙げる。「ビエンナーレとフェアを隔年で組み合わせて開催できたらいい」とフェア継続に意欲を見せた。
◎芸術祭「第2段階」
「Art Fair NAKANOJO 2024」は、来年10回目の節目を迎える国際芸術祭「中之条ビエンナーレ」の総合ディレクター、山重徹夫さん(49)が顧問を務めた。移住者らが企画したフェアについて「最初の中之条ビエンナーレと精神は同じ」と喜んだ。
山重さんは、芸術祭を始めた理由として、都会では多額の費用がかかる表現の場づくりを、地方でつくる必要に迫られていたと振り返る。
芸術祭の定着で移住者が増え、創作や表現の場としてフェアを開いたことに対し、「地域に自分たちの場所をつくることに価値がある。いくら予算があってもできないこと」と評価した。
「第2段階に入った。作家たちが拠点を移し、新たな場所をつくる始まりの日」と今後に期待した。