「都内と自然がすぐそばで、旅にも問題なく行ける。『転職なき移住』ができて、いいとこ取りしている」。高崎での暮らしをこう語るのは「TOKYO FM」(東京)広報の大畠順子さん(41)。現在、都内の同局まで新幹線と地下鉄を乗り継いで、通勤している。本業の傍ら、群馬の暮らしや自然、飲食店といった魅力などを交流サイト(SNS)とブログで発信しており「(群馬県への)移住を考える人の力になれたらうれしい」と笑顔をのぞかせる。
渋川市出身。中央大卒業後、地元のラジオ局などを経て、TOKYO FMに入社した。2014年から都内で暮らしていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大が続く22年7月、JR高崎駅近くのマンションに引っ越した。都内まで新幹線で1時間を切るアクセスの良さと「部屋のフルリノベーション代や新幹線の定期券代、車の維持費を合算しても東京23区でマンションを買うよりお得」という点も決め手になった。
SNSでの発信が注目されるようになる中、同局が制作し、3月に公開した本県のウメのPR動画企画にも携わった。22年9月から県文化審議会の委員も務めるなど、本県との関わりを深めている。
現在のお気に入りは、群馬、長野、新潟3県境の山の尾根を結ぶ「ぐんま県境稜線(りょうせん)トレイル」。「稜線から見える天空のような景色がたまらない」という。注文を付けるなら「上越新幹線の高崎行きの終電繰り上げが解消され、映画館が増えてほしい」と、期待を込める。
18年に旅の記録をまとめた「離島ひとり旅」を出版、日本旅行作家協会の「旅の良書」にも選出された実績を持つ。海外の離島では、世話になった人に「幸福の象徴」として、高崎のミニだるまを渡す。「この人が群馬を知る契機をつくったのは私」と誇らしくなるという。
「羽田空港から早朝便に乗るためのバスが、高崎駅から出ていて便利」。今後も自分のペースで離島旅を続けるとともに、群馬の魅力を発信していくつもりだ。
【取材後記】
◎多様な背景持つ人共生できる地域に
認定NPO法人の昨年の移住希望地ランキングで、群馬は過去最高の2位になった。東京出身の記者は、新鮮な野菜や都内への近さ、価格に対する住宅の広さなどを気に入っている。移住者が訴える魅力を磨き、課題を解決することで、次の移住者が増えるのではないか。リモートワークの普及や新幹線通勤で、居住地の境界はなくなりつつある。多様な背景を持つ人が、共生できる群馬になってほしい。