日常の困り事を気軽に相談できる場をつくろうと、高崎市内の空き家を借りて2022年10月にNPO法人「花」を立ち上げた。コミュニティーカフェと相談所を設け、地域の人の相談に応じた支援を行っている。理事長を務める目崎智恵子さん(60)は「困った時に『助けて』と言える場でありたい」との思いで地域づくりに取り組む。
10年、子育てが一段落した40代の時、高齢者の支援事業などに取り組む別のNPO法人で働き始めた。困窮する高齢者や不登校の子ども、障害がある人の相談を聞き、生活支援をしたり、専門機関へとつないだりしてきた。16年からは、市町村が主体となる「生活支援体制整備事業」の一環で、関連機関や地域住民と連携する高崎市の第1層生活支援コーディネーターとしても活動している。
絶え間なく相談を受ける中で、専門的な支援施設は多くあっても、相談先が分からず、孤立してしまう人を数多く見てきた。少子高齢化が深刻化する中、「地域のつながりを増やしていく活動を、もっと広げなければならない」との思いを強くし、NPOを退職。個人で活動を始めた。
市のコーディネーターや、公益財団法人さわやか福祉財団でも活動しながら、3年間はワンルームを借りて相談に応じてきた。22年、複合化する相談に対応するため、「花」を設立。組織の理事には、社会福祉協議会や包括支援センターの職員、管理栄養士、行政書士らが入っている。
孤食をする人や生活困窮者のための食支援を重要視。近所の人や企業、別のNPOから寄付された食材でおにぎりやみそ汁を提供したり、市の高齢者あんしんセンターと連携した認知症カフェを開いたりしている。
立ち上げから1年8カ月。市内外の高齢者や子ども連れが自然と集まって会話や食事を楽しむなど、地域の人々がつながる空間になっている。相談は傾聴から始め、伴走しながら必要な支援に取り組む。誰ひとり取り残さない社会づくりには、人と人の触れ合いが欠かせないと考え、「お互いさまの精神で助け合い、温かい世の中をつくりたい」と奔走を続けている。
【記者の視点】
◎自分の居場所を見つける大切さ
家庭や職場のほかに居場所といえる場が思い当たらなかった。社会的に孤立しているように見えなくても、誰もが孤独を感じることはあり、時には深刻化する可能性もある。
国は社会全体の課題であるとして新たに法律を作り、対策に乗り出した。周囲の人に目を向け、手を差し伸べるためにも、まずは自分自身が、もう一つの居場所を見つけることから始めたい。