物件の所有者が亡くなったときの「名義変更」について

空き家
物件の所有者が亡くなったときの「名義変更」について
       

上毛新聞すみかくらぶ編集室は今年4月、住む人がいなくなったり、相続したりした空き家や土地についての悩みを受け付け、専門家へ橋渡しをする「空き家・空き地のお悩み受付窓口」を開設した。これまでに35件の相談が寄せられ、そのうち「土地や建物の所有者が亡くなり、固定資産税は納めているが相続登記をしていない。どうしたらよいか」という内容が最も多く9件だった。

 

2024年度から相続登記の申請が義務化されるのを前に、相続登記が気になる人が増えている。相続による空き家問題に詳しい高崎市の行政書士、廣兼喜久恵さんに話を聞いた。

     

          

取材協力/ひろかね行政事務所

行政書士 廣兼 喜久恵さん

土地の許認可や相続遺言を専門に活動している

          
Q1 亡くなった親の不動産を相続登記していません。固定資産税は私が納めています。
       

土地や建物の名義を相続した人に名義変更することを相続登記といいます。2024年度から相続登記の申請が義務化されますが、現在は期限がなく、義務でもありません。そのため、「親が亡くなってすぐに相続の話を持ち出すのは…」と、後回しにする人が多いようです。

     

          

「固定資産税を納めていれば大丈夫だろう」と思っていないでしょうか。中には、固定資産税を納めているから相続登記が終わっていると勘違いをしている人もいます。

 

納税と登記は別です。固定資産税は不動産の名義が亡くなった人のままでも納められます。市区町村は固定資産税の納税者が亡くなった場合、まずは同居の親族、いない場合は、同じ市区町村の相続人と思われる人に通知書を送ります。おそらく相談者は市区町村からの納税通知書を受け取り、「親の不動産だから」と、納税したのだと思われます。このまま相続登記をしないと、代表相続人として納税し続けることになります。その人が亡くなったら、その子どもが代わりに納税することになります。将来、さまざまなトラブルに発展する可能性も出てきます。まず、誰が不動産を相続するのかを決めましょう。

          
Q2 相続登記をしない場合、どんなデメリットがありますか。
  

          

不動産の登記には費用がかかるため、義務でないなら登記しなくてもいいと思う人もいるかもしれません。

 

相続登記をしないと、不動産の名義は亡くなった人のままで、相続人全員の共有の状態となります。他人名義のままだと売ったりできませんし、リフォームしたいと思っても、ローンが借りられません。時間が経過すると、相続人が増える、相続人の誰かが認知症になって判断能力がなくなる、などの可能性も出てきます。相続関係が複雑になって、話がまとまらなかったり、登記自体が難しくなったりすることも十分考えられます。登記に必要な相続人全員の調査や、書類を集めることは相当な時間と手間がかかります。費用も数倍~数十倍になることも。

 

そのため相続登記ができずに長期間放置するケースが多くなり、全国に所有者不明の土地が増えています。

          
Q3 将来、親の不動産を相続する可能性があります。相続登記は早めにしたいと思いますが、いつ頃を目安にしたらいいでしょうか。
       

最近は、相続が発生したら、すぐに専門家に相談する人もいますが、多くの人は、親が亡くなってしばらくたってから考え始めることが多いようです。早い時期であればあるほど、事情の分かる相続人がそろいやすく、次の行動に移ることができます。できれば、四十九日や新盆などの機会、遅くとも一周忌までには相続の方向性が決まるといいですね。経験上、相続人の気持ちが一致しているときが、もめごとも少ないように感じています。

     

          

相続した自分の権利を守るためにもかかる費用を最小限におさえるためにも、「一周忌」のタイミングを目安に、早めに行うのがいいでしょう。

     

          

★廣兼さんの事務所にて。

愛猫ぷくちゃんと、友人の弁護士 増田泰宏さん(左)

 

増田さんは、10月号の記事で再登場いたします。お楽しみに!

 

*一部、写真はイメージです

  

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