県内各自治体は、2015年に全面施行された「空き家対策特別措置法」に基づいて空き家の利活用を含めた対策に取り組んでいる。
渋川市は住宅を取得し、市外から転入する人への助成金として、マイカー利用者を支援する「普通自動車運転免許取得支援」などの加算項目を増やし、新たに市民になる人をバックアップする。
さまざまな取り組みについて渋川市政策創造課と、市の空き家バンクを利用して移住した人に話を聞いた。
住宅を取得し、渋川市に転入する人に助成金を交付しています。一定の条件を満たした人には一律10万円を助成します。この助成金には、条件に応じた加算があります。申請者(所有者)の年齢に応じた「若者支援」、同一世帯の15歳以下の子ども一人につき5万円を加算する「子育て支援」などがあります。
今年は、「普通自動車運転免許取得支援」(20万円)、「ペーパードライバー講習受講支援」(3万円)、「テレワーク勤務支援」(20万円)の3つの加算項目を増やしました。昨年の内容から見直し、増額した項目もあります。「中古住宅取得」は5万円から10万円に、さらに渋川市空き家バンクを利用した人には5万円から20万円に増額しました。
ほかに、空き家の解体補助金やリフォーム補助金、家財道具片付け補助金、狭小地隣地統合補助金などがあります。条件や補助金の内容などは市にお問い合わせください。
群馬県で生活するには、車の利用はほぼ不可欠と言えます。都内などに居住していると、普段使わない車の運転に不安を感じ、それが移住の足かせになっているケースは多いと思います。
その心配をなるべくサポートしてスムーズに移住できるようにと、この助成金を新設しました。
「渋川市空家等対策計画」を策定した2016年の調査では、空き家が1348件ありました。今年3月末の調査では1645件で、5年間でおよそ300件増加しました。所有者に意向調査を行ったところ、「家財、仏壇などが残っていて物置状態になっている」「解体費用が都合つかない」などの悩みを抱える人や、「利用予定がない」と答えた人が3割いることが分かりました。
市では、「解決!空き家問題」という小冊子を作り、これまで多く寄せられた相談事例を取り上げ、対処法や対策を細かく紹介しています。空き家バンクの案内や、シルバー人材センターと協定を結んで空き家の管理サービスも行っています。
また、市民の皆さんの悩みや相談に応じる無料相談会を開いています。予約制で現在のところ10月まで満席ですが、ぜひ活用してください。
2018年から開始しました。年々登録物件が増え、これまでに49件の登録がありました。
物件を登録すると、全国版の空き家空き地バンクに掲載されること、市と協定を結んだ協力事業者が仲介するため安心して相談できること、管理や活用する人は補助金を利用できるなど、市民の皆さんに制度やメリットが浸透してきたと感じています。成約も毎年あり、これまでに28件が成約となっています。
渋川市空き家バンクの物件を購入し、一昨年秋に同市伊香保町に移住したガラス作家の阿部貴央さん(36)=横浜市出身。昨年6月に、吹きガラスの制作体験工房と展示販売の店「伊香保ガラス工房 吹々(ふくふく)」を開いた阿部さんに移住について聞いた。
ガラス作家として独立を考えていた頃、見学に行った先輩の工房で空き家を購入して改修したことを聞き、物件が安く手に入ること、自分の好みに手を加えられることに魅力を感じた。インターネットを利用して関東近辺の空き家バンクの物件を探し始め、鉄筋コンクリート造りで住居と工房を一緒にできるこの物件を見つけた。涼しい気候と自然豊かな立地が気に入ったこと、周囲の歓迎ムードを肌で感じたことが決め手となった。
購入後は、市の助成金を活用して、美容室とラーメン店だった店舗兼住宅を改修し、ガラス制作の溶解炉や焼き窯、冷却窯などを備えた。展示販売の店は、ラーメン店の厨房やカウンターの雰囲気を生かし、内装や床の板張り、棚の造作などを自ら手掛けた。
周辺はホテル街で、作品や店の紹介チラシを置いてPRに協力してくれている。空き家バンクを利用して良かったことは、たくさんの物件をネット上で探せたこと。住み心地もよく、広い空間も快適だ。新しいことを始めたい人こそ、空き家バンクの物件を見て検討してほしい。
取材協力/渋川市政策創造課