司法書士に相談しよう「空き家」の問題

空き家
司法書士に相談しよう「空き家」の問題
       

住宅の所有者が亡くなった場合、一般的には相続が行われて相続人が管理するか、売却や解体が行われる。

しかし、相続が順調に行われないと、その住宅が空き家になってしまう可能性がある。最近は相続登記(所有者の名義変更)を行う際、取得者の住所と取得した物件の所在地が異なるケースや、取得者もすでに自分の家を所有している場合が多いという。自分や家族の所有する家を空き家にしないためにはどうしたらよいか。相談事例をもとに群馬司法書士会副会長の茂木徹さんに聞いた。

          
空き家が増えています。 不動産管理と関連はありますか?
       

空き家に関する問題の大半は、不動産が適切に管理されていないことによります。その中には、相続登記などの手続きがされず、長年にわたり放置されてしまっているために、自治体による不動産の所有者調査が困難となっているケースが多くあります。

相続登記などの手続きがその都度、適切に行われれば、将来の「空き家化」を予防することにつながります。司法書士は、相続登記を行う専門家であり、相続人を特定するための戸籍調査を素早く正確に行うことができます。成年後見制度や相続財産・不在者財産管理人制度の利用が必要となった場合にも、司法書士が後見人等に選任されるケースもありますので、それらに就任して財産管理業務を行うことができます。

          
【相談事例1】実家の父と母が亡くなりました。子どもは2人います。何から手をつければいいでしょうか。
       

両親の相続が開始してから現在までに遺産分割をせず、遺言や生前贈与なども行われていない場合は、まず両親の相続について遺産分割を行うことが必要です。

遺産分割は、大きく4つの方法に分かれます。

①現物分割=どちらかの単独名義とする

②代償分割=名義を取得した方が、もう一方に対し金銭などを支払う

③換価分割=遺産を現金化した後にその金銭を分配する

④共有名義=遺産分割協議で共同所有とする

まずは、「誰が相続するか」から話し合いをスタートすると良いでしょう。その他に遺産がある場合は、それらも含めて組み合わせて行うことも可能です。

立地や建物の状況によっては、すぐに現金化できないケースがあります。また、このケースは子ども2人で共有する場合、持ち分の割合は当事者の間で別段の合意のない限り平等となり、「所有権を1/2持っている」ということになります。現状維持の場合は問題ありませんが、例えば管理方法を変えたり、一人が売りたいと考えたとしても、共有者のもう一人のきょうだいが同意しないと管理方法を変えたり、売買できません。

実家が両親のどちらかの名義のままであり、子どもが2人とも離れて暮らしている場合、すでに相当程度の管理不全の状態にあると考えられます。空き家にしないためにも、子ども2人で早めの話し合いが大切です。

     

          
【相談事例2】 実家の登記名義人は父ですが、認知症で施設に入居していて、会話などがおぼつきません。実家は現在、誰も住んでいないため困っています。
       

認知症には個人差があり、症状や程度もさまざまです。成年後見制度の利用を考える前に、その時点での父の状態、財産のことを把握するのが良いでしょう。

後見とは、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力を欠く常況にある人に対して、本人の権利を法律的に支援、保護するための制度です。本人の判断能力の程度に応じて、後見、保佐、補助の3類型があり、判断能力を常に欠いている状態の人には成年後見人を、判断能力が著しく不十分な人には保佐を、判断能力が不十分な人には補助人を裁判所が選任し、本人を支援します。

本人自身がどのように考えているかは、何より大事なことです。その上で自宅を所有していることのメリットやデメリットを考えるのがいいでしょう。

例えば、本人の預金残高が減少し、今後の施設費を賄えなくなるかもしれないということであれば、自宅を処分し、その費用に充てることも考えられます。成年後見人が被後見人の自宅を売却などする場合には、民法859条の3により居住用不動産の処分に対する家庭裁判所の許可を得なければなりませんが、このような事情がある場合、許可は下りるものと考えられます。

     

          
【相談事例3】 県外に居住しているため、相続しても管理できる自信がありません。できれば相続を放棄したいと考えています。
       

相続放棄とは、相続の権利を放棄して遺産を一切受け取らないことをいいます。亡くなった人の遺産は、配偶者や子どもなど相続人が相続します。ただし、相続人は必ず遺産を相続しなければならないわけではなく、相続しないこともできます。相続放棄した人は最初から相続人でなかったことになり、他に相続人がいればその人たちだけで遺産を分け合うことになります。

相続放棄には一定のルールがあります。一つは、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三か月以内に家庭裁判所に申述せよ」という期間的な制限です。その他にも遺産を売却してしまったりすると、相続したものとみなされてしまう場合もあります。預金は相続したいけれども、重荷になるかもしれない不動産は相続したくないといった都合のいい話は通りません。

また、相続開始する前に、その相続放棄はできませんので、どなたかが亡くなる前には、まだ開始していない相続の放棄を行うことはできないということです。

このケースは管理の面で困難があるということですので、管理を請け負ってくれる業者に委託するか、リフォームで十分に使用できる状態であれば賃貸や売却、または、解体し更地にして売却する方法もあります。土地と建物の所有者が同一でないケースもありますので、事前に確認が必要です。

     

          
相続に悩んだら司法書士に相談を
       

空き家は全国的に年々、増加傾向にあります。その中には、相続がうまくいっていないケースも見受けられます。相続はご家庭ごとに事情や内容が異なるものです。群馬司法書士総合相談センターでは相続に関する無料の電話相談を受け付けていますので、どこに相談したらよいか分からないという方は、ぜひご相談ください。

 

群馬司法書士総合相談センター

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【受付時間】月曜日から金曜日の午前10時から午後4時まで

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取材協力/群馬司法書士会

2021年6月24日付 すみかくらぶ 掲載

  

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