今後増え続けるとされている「空き家」。社会問題化している空き家対策に取り組む企業も徐々に増えている。個人での管理に限界を感じたら、プロに依頼するのもいいだろう。空き家の管理を代行するサービスに密着した。
「親が他界し、空き家になった実家の管理に困っている」「転勤で自宅を長期不在にすることになり、留守宅が心配」「相続した実家が遠方で適正な管理ができない」など。空き家には、所有者それぞれに悩みがある。
そもそも家とは、人が住んでいること自体が建物のメンテナンスにもなっている。家に人が住んでいないと建物の劣化が急速に進み、たとえ資産価値のある建物であっても、数年間放置しようものなら廃屋のようになってしまうだろう。
敷地内も雑草や樹木の繁茂による周辺への悪影響のほか、ゴミの不法投棄、不審者や動物の侵入など、さまざまな問題が発生する。
このような事態にならないように、管理が難しい所有者に代わって定期的な巡回管理を行い、結果を報告してくれるのが「空き家管理代行サービス」だ。
実際に伊勢崎市を中心に空き家の管理代行を行う大進建設(伊勢崎市平和町)の管理業務を紹介する。同社の管理工程に同行し、その取り組みを企画開発部の笈川貴士専務に聞いた。
- 物件
築40年以上の2階建て
- 経緯
子どものいないご夫婦が長年暮らしていた家で、過去に同社で何度かリフォームを行った。奥さまが先に他界してからはご主人が1人で生活をしていたが、施設への入居を機に家の管理を同社に依頼した。
- 契約内容
・室内・屋外を管理するベーシックなプラン。
・月に1回、約60分の巡回管理(月額10000円・税別)
・結果報告
⇒同社はこれらの作業を動画や写真に収めて管理レポートを報告している。依頼者はパソコンやスマートフォンから手軽に作業の様子を確認することができ、海外転勤者にも対応している。
- 実際の作業工程
1 外回りの異常確認と清掃
建物外部に異常がないか目視で点検し、敷地の雑草除去やゴミの回収などを行う
2 郵便配達物の確認
郵便受け内の投函物を回収し、仕分けをして必要なもののみ室内にて保管する。急ぎの者は所有者に連絡する
3 全室を換気
すべての部屋の窓やドアをを開放し、空気の入れ替えを行う
4 水回りの確認と清掃
すべての蛇口を開放して通水を行う。室内のホコリの除去など簡易清掃を行う
5 室内の異常確認
雨漏りや破損などの異常がないか、外部からの侵入の痕跡はないか、施錠の状態も確認する
空き家の管理を所有者自身で行う人も多いだろう。笈川専務は「理想は月に1回、最低でも年に3回程度は確認をしてほしい」と呼びかけている。
建物にとって特に大事なのは換気。窓はすべて開けて風を通して開放する。通風を行わないとじめじめとした湿気が室内にこもり、カビが広がって家の傷みが進んでしまうからだ。
また、キッチンや浴室、トイレ、洗面などあらゆる水回りに対して、通水を定期的に行う必要がある。サビの付着や臭気発生の予防になり、実際に漏水を発見した事例もあるという。屋外は近隣住民からのクレームにならないよう、敷地内の雑草の除去や庭木の剪定。また、郵便受けの整理は防犯面の強化にもなる。
空き家になったとしても適切に管理することで建物の老朽化を遅らせることができる。将来リフォームして住むときや人に貸すとき、売却するときにも有利になる。「空き家は利活用することもできます。地域の専門家にぜひご相談ください」と同社は呼び掛けている。
取材協力/大進建設(株)
2021年3月25日付 すみかくらぶ 掲載