宅建協会に聞く「空き家」の問題

空き家
宅建協会に聞く「空き家」の問題
       

年々増加し、社会問題となっている空き家。「地域に及ぼす影響は」「利活用のために心掛けたいことは」-。空き家対策に取り組む群馬県宅地建物取引業協会(以下、宅建協会)の新井栄常務理事に聞いた。

          
空き家が増えることでどんな問題が生じますか?
       

一つ目は、住まいの老朽化が進行することで、不動産としての価値が低下します。所有者にとっては、どんどん売りづらくなるだけでなく、倒壊の恐れが生じるので不安材料も増えます。

二つ目は、管理されないことで公衆衛生上の問題が生じます。害虫や悪臭が発生したり、庭があれば樹木や雑草が伸び放題になったり。三つ目の問題は景観の悪化を引き起こします。このような空き家が増えると地域全体の活気が失われ、まちの衰退を招くことになります。これが四つ目の問題です。五つ目に、衰退したまち全体の価値が失われてしまいます。一度失った活気や価値を取り戻すのは大変なことです。空き家は自分や家族だけの問題ではありません。深刻な社会問題なのです。

     

          
宅建協会が取り組んでいる「空き家対策」とは?
       

宅建協会は、約1600社が加盟している県内最大の不動産業者の団体。県内12市4町1村と連携して、中立的な立場で空き家に関する相談会を開いたり、空き家が市場に流通できるよう促進したり、空き家の利活用について協定を結んだりしながら売却や利活用を進めています。

例えば、ある自治体とは「空き家バンク」(※)をスタートさせたときから協力体制を敷いており、登録する前の物件調査、ホームページ上での情報公開、物件フォーマットの提供などをしています。今はコロナで人を集めることは控えていますが、以前は移住促進イベントを開いたり、移住を望む人たちのバスツアーがあるときは物件案内や立ち合いをしました。

※自治体が運営する空き家の所有者と利用希望者をマッチングさせる仕組み

          
どんな相談事が多く寄せられますか? またそれに対してどんな解決策がありますか?
       

相談の90%以上を占めるのが「かつて両親が住んでいたが、空き家になったので処分したいという」というもの。相談者が県内にいるケースもあれば、遠く離れた地に住んでいて管理できていない場合も多いですね。

住まいの状況にもよりますが、状態が良ければ空き家バンクなどに登録して売却するという方法があります。あまりにも修理に費用がかかって解体するしか手段がないというケースもあります。ある程度の広さがあって、築年数がたっている場合は、解体し、分筆登記して相続することもあります。

都市部とそれ以外の場所によっても異なりますが、都市部の狭小地で周辺にいくつも同じような空き家がある場合は、一体の空き家を解体して分譲地に開発し直すこともあります。この場合、周辺の空き家の所有者全員と、事前の打ち合わせをしておく必要があります。また、都市部以外では農家の広い敷地を手ごろな広さに分譲し、ひとつのまちとして生まれ変わらせる提案をすることもあります。

     

          
空き家の利活用が進まない理由はなんでしょうか?
       

一番は築年数。空き家の多くは40~50年前に建てられた住まいで、住宅性能は今とまるで違います。そのため、快適に住めるよう手を入れると、新築と変わらない価格になることも少なくありません。このことが決断を鈍らせる要因になっていると思います。

また、こちらも立地によっても理由が異なりますが、都市部では道路が狭くて解体しようにも車両が入っていけない、仮に解体できたとしても建築確認が得られない、狭小地だという理由で買い手がつかない、ということも多いですね。それ以外のエリアでは、敷地が広すぎて利活用に頭を悩ませることがあります。

悩んでいる間に時間だけが経過し、相続人が増えて全員の了承が取りづらくなり、売るに売れなくなるということもあります。何もしないのは、問題を先送りするだけ。リスクは増えていく一方なので、なるべく早めに、できれば空き家予備軍になる危険性を感じる前に家族間できちんと話し合いをしておくことをおすすめします。

     

          
空き家の利活用や処分で心掛けてほしいことは何ですか?
       

先にお話ししたようにまずは、ご家族でよく話し合っていただくこと。住人がいるときに、空き家になったときのことを話すのは気がひけるかもしれませんが、実際に空き家になってからでは大変さが増すだけ。なるべく早い段階で、関わる人が納得のゆく結果を出しておくといいと思います。

空き家対策に関する事業は地域の活性化を促すもので、不動産業者にとっての社会貢献です。ネットワークを生かして利活用や売却先を探す手助けをすることは、私たちの使命だと思っています。どうにもならないとあきらめかけている物件も、専門家ならではの知識と経験から出てくるアイデアで、明るい光をともすことができるかもしれません。当協会でも相談をお受けしています。空き家を負の財産にすることなく、地域の宝としてよみがえらせるためにも、まずはぜひ一度、ご相談をお勧めします。

取材協力/一般社団法人 群馬県宅地建物取引業協会

 

2021年4月22日付 すみかくらぶ 掲載

     

  

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